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校舎から少し離れた体育倉庫へとやってきた朝陽は、ゆっくりと扉へ近づいた。遠くの方からは部活動にいそしむ生徒たちの掛け声が聞こえてくるが、倉庫の周辺は静かで、人がいる気配はなさそうだった。
「間宮さん、そこにいるの?」
扉の前でそう声をかけた朝陽。しかし、中から返事はない。今度は扉をドンドンと叩いて「間宮さん!」と、先ほどよりも大きな声で彼女の名を呼んだ。それでも反応は返ってこなかった。まさか中で倒れているのだろうか。
「くそっ!」
考えられる事態を並べた朝陽は煩わしそうに舌打ちをそて、体育倉庫の扉に手をかけた。すると——。
「あれ……?」
開かないだろうと思っていた扉が、なんと動いたのだ。呆気に取られた朝陽だったが、すぐさま扉を右に大きく開く。そして、中に入ろうと一歩踏み出したところで、呆然とした表情を浮かべた。
「間宮さん……?」
入り口からの光しか差し込まない倉庫内は、真っ暗で埃っぽい空間だった。学園中ゴージャスな造りになっている帝華学園に、こんな場所があったのかと思うほど、そこは管理が行き届いていなさそうな場所だった。
もう一方の扉も開け、光が差し込んだ倉庫内に足を踏み入れた朝陽は、周囲を見渡した。しかし、そこにいると思っていたくるみの姿は、どこにもいない……・
「……鍵がないと開かないはずだけど。もしかして、誰かが開けたのか……?」
くるみを呼び出したというファンクラブ会員たちは、最初からしばらく閉じ込めることだけが目的だったのかもしれない。朝陽がここに到着する前に、彼女たちによってくるみが解放されたという可能性もある。
大きなため息をついた朝陽は、ひとまず彼女が倒れていなかったことに、ほっと息をついた。そして、すぐさま踵を返すと、このことを他のメンバーにも報告するため、生徒会室へと向かおうとしたのだが。
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