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◇◇◇
今度こそ生徒会室に向かった朝陽は、部屋の扉を開けた先にいた人物に驚いた表情を見せた。なんと、そこには体育倉庫に閉じ込められていたとされるくるみの姿があったのだ。
「久坂くん、お疲れ様です」
「間宮さん、ここにいたんだ……」
にっこりと笑顔を見せるくるみに、朝陽は戸惑いを見せた。一条率いるファンクラブ会員たちの話によると、くるみは確かに鍵がかけられた体育倉庫に閉じ込められたはず。
しかし、当の本人はいつもと変わらない様子で書類の束に向かい、事務処理に勤しんでいたようだった。
「クラスの奴らに、間宮さんが体育倉庫の方に連れていかれたって話聞いたんだけど」
「体育倉庫、ですか」
「うん。閉じ込められたんじゃなかったの?」
朝陽の問いかけに、くるみが何か言おうと口を開く。しかし、ハッとした表情を見せたあと口をギュッと結んだ彼女は、いつものようににっこりと笑ってみせた。
「いいえ。確かに体育倉庫には行きましたけど、それはサッカー部が保管しているボールの数に確認に行っただけで。ほら、今度の球技大会で使うって会長がおっしゃっていたじゃないですか」
「それはそうだけど……本当に、それだけ?」
「ええ」
くるみの返答に朝陽は首を傾げた。先ほどの女生徒たちの様子を見れば、彼女たちがくるみを体育倉庫に閉じ込めたことは確かだとわかる。ところが、くるみはその事実を否定した。
「……本当に、何もなかった?」
先ほどくるみが何か言いかけたのが気になったのか、朝陽は彼女にそう尋ねた。すると、くるみは
「心配、してくれてるんですか?」
と言って、クスクスと朝陽に笑いかけた。いつもと違う、彼女のやわらかい笑みを向けられた朝陽は、一瞬目を丸くして驚いた。
「これまでに副会長に就任した女の子たちも何かと大変そうだったから……。念のため、間宮さんも気をつけて」
「ご忠告ありがとうございます」
二人がそんな会話をしているところに扉が開き、「疲れたー!」と彼方が入ってくる。そのあと会議を終えたほかのメンバーが続々と帰ってくると、生徒会室には慌ただしい雰囲気が戻ってきた。
自分の席に戻った朝陽は、時折くるみに目を向けてみる。しかし、これといって大きな変化はなく、朝陽の疑問はますます深くなるばかりだった。
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