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「間宮さんが……」
男子生徒の慌てように、朝陽は動揺した。
最初に就任した副会長の女子生徒は、「嫌がらせがひどくて、困っているんです。なんとかしてくれませんか?」と目に涙を浮かべて朝陽に嘆願してきた。
それを聞き入れた朝陽は、彼女の言う通り副会長に嫌がらせをしているという女子生徒たちを呼んで、嫌がらせを止めるように諭したのだが、なぜか副会長はその数日後に辞退届を提出し、その任を降りることに。
あとから聞いた話だが、裏で一条静花から何かしらの根回しがあったらしい。
ファンクラブのリーダー的存在の彼女は、政界の重鎮である父を持ち、この学園内でも帝華会メンバーの次に影響力をもつ人物。
自分たちの両親たちとも交流がある彼女のことを、帝華会メンバーもあまり邪険に扱うことができないという事情もあり、静花の行いを放置しているという理由もある。それ以上に彼らには、この生徒会に他の役員を置きたくない理由があったのだが──。
『副会長に立候補したくてやってきました、間宮くるみです。どうぞよろしくお願いします』
均衡が保たれた日常に突如として現れた間宮くるみ。
大なり小なりファンクラブの面々が起こしたトラブルについては、当然のことながら彼らの耳にも入ってきている。だが、過去の話し合いでそのときの対応については「ファンクラブ絡みの諍いには生徒会は一切関与しない」と決めている。いまさら、手出しするつもりはなかった。
「それでも……」
朝陽は小さくそう呟くと、手のひらをギュッと強く握り締めた。
くるみが目の下にクマが作ってまで一生懸命に仕事に励む理由も、体育倉庫に閉じ込められていたことを隠していることも気になっていた。
「俺、間宮さんを助けに行ってきます!」
朝陽はその場から駆け出して、男子生徒のあとをついていく。
「朝陽、ちょっと待てよ!」
後ろで遊の声が聞こえてきたが、その制止も聞かずに生徒会室を出ていった。
しかし、現場についた朝陽は、目に入ってきた光景に言葉を失う。やや遅れて到着した男子生徒からは、「ま、間宮さん!」と悲痛な叫びが聞こえてきた。
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