波乱の幕開け

27/38
前へ
/40ページ
次へ
「地獄というのものが、どういうものか見せて差し上げましょうか」 相手の胸ぐらを掴み、にっこりと笑う。その目は笑っているのに恐ろしく、周囲にいる者たちはぶるぶると肩を震わせた。 朝陽に少し遅れて駆けつけた生徒会役員たちは、誰もがその光景に唖然とした。なぜなら、胸ぐらを掴んでいる生徒というのが、間宮くるみだったからだ。 「え……?間宮さん……?」 彼女を助けるべく駆けつけたはずだった朝陽は、少し混乱しているようだった。鬼のような形相で一条静花を睨むくるみは、聖母のように微笑んでいたときとは打って変わって、まるで別人のよう。 ちなみに、当のくるみは彼らの登場にまったく気づいていない。 「私、今日はたいっっっせつな用があるから急いでるんですって言いましたよね。その綺麗な花飾りがついた頭の中は、空っぽなんですか?人の話はきちんと聞くって小学生の時に習わなかったのかしら?」 「す、すみません……!」 「すみませんで済んだら警察なんていらないって、もはや常識ですよね?」 またも、にっこりと笑うくるみに女子生徒たちは、瞳に涙をたっぷりと溜めて「ヒィィィィ!」と声を上げた。 「美しすぎる私に嫉妬したくなる気持ちは、よく分かりますわ。学園中の男子生徒の心を奪い、美麗な生徒会役員たちに囲まれる私が、さぞ羨ましかったでしょう!この美貌を持って生まれた私が、どれほど罪な存在かということは重々承知しています」 真顔でそんなことを言うくるみに、周囲の者たちは唖然として声もあげられなかった。 今、目の前にいるのは誰なのか。 誰もがこの状況を呑み込むことが出来ずに、戸惑っているようだった。しかし、そんな周りの様子にもお構いなしに間宮くるみは独壇場を続ける。 「教科書をズタズタに引き裂いたり、体操服を隠したいりと、子どもっぽい嫌がらせも、その嫉妬心ゆえと思えば逆に燃えましたけど……」 うっとりとした表情を浮かべながら話すくるみに、よもやその場にいた者たちはドン引きしている。何度も言っておくが、くるみは生徒会メンバーがその場にいることにいまだ気づいていない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加