波乱の幕開け

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「か、か、か、会長!!!!いつからそこに……!!」 「『地獄というものが』というところからだ」 「最初っからじゃないですか!!!!」 慌てふためくくるみは、胸ぐらを掴んでいる静花を揺さぶりながら「どうしてくれるのよ!私の計画がめちゃくちゃになったじゃない!!」と、わめいていた。静花は、そんなくるみに何度も「申し訳ありません!」と謝っていて、もはやカオス。 生徒会役員が到着するまでに、どんなやりとりがあったかは分からないが、ファンクラブの面々の反応を見る限り、彼女たちとくるみとの間に何かあったのは明白なこと。 「……な、何か、間宮さん。めちゃくちゃキャラ違いません?」 「うん……」 彼方の言葉に、唖然とした表情を浮かべた朝陽が力なくそう返した。 少なくとも朝陽の中では嫌がらせにも健気に耐え、一生懸命仕事に励み、困っている人がいたら助けてあげる親切な人として認識されていた。 だからこそ、男子生徒に「間宮さんが大変」だと聞いたときに真っ先に生徒会室を飛び出して、現場へ駆けつけた。 ところが来てみると、その予想とは大きくかけ離れた事態が繰り広げられていたのだから、朝陽が呆然としてしまうのも無理はない。 「……なるほど。あれが間宮さんの本性か」 性格が一変したくるみを見ながら、どこか楽しそうな笑みを浮かべる理人。意外にも冷静な彼は、この状況に大きな戸惑いを見せてはいないようだ。遊に「理人、笑いすぎ」と言われるほどである。 「遊、間宮くるみを引き剥がせ」 「はいはい」 遊は令から指示を受け、二人を引き離すため「ひとまず落ち着いて」と、くるみに近づいた。だが、どうも彼女の様子がおかしいことに気づく。ゼェハァと息が荒く、顔色も悪い。 「ちょっと、間宮。大丈夫?」 遊が恐々とした様子で近づきながら声をかけるが、くるみの瞳に彼の姿が映ることはなかった。 「せっかく、これ、まで……がんばっ…て、き、たの……に……」 そう言いながら、くるみの手はスルリと滑り落ち、突如ばたりとその場に倒れ込んだ。 あたりにはくるみが持っていたカバンの中身が散乱し、慌てた様子の朝陽が「間宮さん!」と側に駆けつけた。
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