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◇◇◇
「令。君、最初から間宮さんを辞めさせる気なかっただろ?」
「何のことだ?」
「また、とぼけちゃって」
くるみが下校してからの生徒会室、理人は真相をはぐらかそうとする令に苦笑いを浮かべながら、そう言った。
「朝陽があそこで止めに入るのも予想した上での判断だろ?全く、俺はお前のそういうところが怖いなって思うよ」
「俺も何となく気づいたから黙ってたけど、彼方は口出ししなくて正解だったな」
「だって、会長怖くって」
「まあ、確かに……」
のんきそうに、そんなことを話している理人と遊と彼方。一方、くるみの副会長解任取り消しのきっかけとなった朝陽は、どこか複雑そうな顔を浮かべていた。
「……最初から辞めさせる気がないなら、言っておいてくださいよ。何か、俺だけ恥ずかしいじゃないですか……」
どんよりと落ち込んでいる様子の朝陽に、令はふと笑う。
「始めからゲームのことを盾に仕事をしろと脅してもよかったんだが、それだと、あの女反省しないだろ」
「そうだね。ちょっとお灸を添える意味では、よかったのかも」
理人もクスクスと笑いながら、そう続ける。
「……今年1年は特に忙しい年になるからな。あいつなら女子たちともやり合えるだろうし、何より戦力になるヤツは手元に置いておきたい。あいつの弱みも握れたことだ」
令はそう言うと、口元にニヤリと笑みを浮かべた。
「せいぜい俺たちのために、しっかりと働いてもらおうか」
こうして弱みを握られたくるみは、ひとまず副会長解任を回避し、生徒会執行役員として活動を続けることが許された。
そして、これから本当の意味で、彼らとの関係が深まっていくことをくるみはまだ知る由もなかった──。
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