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◇◇◇
その日の放課後、校舎の西棟にある生徒会室では役員たちが六月に催される文化祭についての会議が行なわれていた。室内では山のように束ねられた書類が次から次へと振り分けられ、「処理済」のボックスに重ねられていく。
「久坂は、来週火曜の委員長会議で発表する意見をまとめておいてくれ。雨天になった場合の代案も、合わせて出すように」
生徒会長である令は、束になった書類に目を通しながら、書記の朝陽に紙切れを一枚手渡した。
「それなら昨日、彼方と一緒にやっておきましたよ」
朝陽が席まで資料が入ったファイルを持っていき手渡すと、書類に目を通し始める令。朝陽の後ろには彼方がやってきて、「会長、すごいでしょ?褒めてくれてもいいんですよ」などと、緩さ全開で笑っている。
「不備はない。あとは、この書類を差しこんで印刷だ。頼んだぞ」
「はい、了解しました」
「あれ?コメントなしっスか、会長」
そう言いながら令へとすり寄る彼方だが、多忙な会長はちらりと鋭い視線をやっただけで、また手元の資料に視線を落とした。
「右手の拳なら、いつでもくれてやるぞ」
「も、もう〜。冗談ですよ、冗談」
聞こえた言葉にへらりと苦笑いを浮かべた彼方は、令との会話は諦めて、伸びをしながら自分の席へと戻っていった。いつも通りの光景に朝陽も苦笑いをしながら自分の席に着くと、隣に座っている副会長の理人から「朝陽」と名前を呼ばれる。
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