波乱の幕開け

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「何ですか?」 「確か、2Cのクラス代表と仲が良かったね。これ頼まれてた申請書の許可証だから、渡しておいてくれないか?」 「わかりました。ちょうど、俺も渡したかったものあったので、まとめて明日持っていきます」 「助かるよ」 「いえ、ついでなので」 帝華学園は部活数も多いので、文化祭の準備と予算会議が開かれるこの時期は、いつも忙しい。静かな室内には紙をめくる音やパソコンのキーボードを叩く音が響くだけで、仕事以外の会話は一切なく作業が進められていた。 そんな慌ただしい空気が漂う中、突如コンコンと生徒会室の扉を叩く音が鳴る。動いていた全員の手がふと止まり、視線が扉に向けられた。令が入り口に一番近い彼方に目で合図すると、小さく頷いた彼方が「はーい」と返事をする。 「ご用件は何でしょうか?」 扉を開けると、そこには「こんにちは」と花が咲くような可憐な笑みを浮かべ、品良く一礼した一人の少女がいた。 さらさらと流れる長い黒髪を耳にかけ、首をやや傾げた仕草は愛らしい。だが、そんな美少女の登場に良い反応見せる人物はこの部屋に皆無だった。 「用件があるなら手短に話せ」 令はまた書類に目を落とながら、そう淡々と告げた。今は少しの時間も惜しいのか、その手は休むことなく動いている。そんな令の様子を見ても少女は笑顔のまま。生徒会室に一歩踏み出した彼女は、令以外の他の役員に視線を移し、こう高らかに宣言した。 「副会長に立候補したくてやってきました、間宮くるみです。どうぞよろしくお願いします」 予想だにもしなかった彼女の言葉に、室内にいる全員の手が再び止まったのはいうまでもないだろう。
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