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ぐぅぅとお腹がなり、そっと扉を開くと、ソファーにぐったり凭れているシロクマさんがいる。
「僕は、のどかちゃんだけだから」
動く兆しがない。寝たのかな?僕は小さな電気をつけて夕食を作る。2食分なんていらないのに、作ってしまう。
「シロクマさんは食べれないだろう」
のどかちゃんの姿で帰ってきたら、きっとまた違っただろう。でも、期間が決まっているなら、さよならがまた淋しくなる。
1食分は明日食べよう。シロクマさんのほうを向き「おやすみ」と声をかける。今までなら片手を挙げてくれたのに、無反応か。
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結城くんが作った夕食が食べられない。声が出せないから、言いたいことを伝えるのも時間がかかる。こんな関係、ツラすぎるだけだ。閉まった扉を見て物音がしなくなったのを確認してから、わたしは固定電話を手にした。プッシュするにもまた、時間がかかる。
『もし、シロクマさんに魂移せたら、無言電話かけるから』
沙良ちゃんのスマホ番号にかける。受話器に子供っぽい高い声が聞こえてくる。
「もしもし?」
間違い電話じゃないから、覚えているよね?わたしが電話してもわかるように、午前3時にかけている。
「のどか先輩・・・行きますね」
会いたい人は結城くん以外に沙良ちゃん。形あるシロクマさんとして対面するのは久しぶりだ。
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