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白い大きな手が僕の頭を優しく撫でてくれる。そして、ゆっくりと抱きしめて。話せたら声が聞けたらなんて、願いは叶わない。
「お、さまった」
泣き虫な僕をずっと見ていてくれたの?それとも、いつまでもわたしを思い出してないで次の恋へと進めとでも?
シロクマさんが必死に手を動かしているのは何か意味がある。そこで伸ばしている手の先を見れば袋のパンがあることに気づく。
「泣き止んだら、食べろと?」
こくこくと頷くシロクマさん。パンの袋が持てたのだ。僕がダイニングソファーから寝室にいたのは、お姫様だっこのように運んでくれたからだ。
「ソファーに座れないからって、体育座りで見ないでよ」
僕が、袋を開けてパンを食べるところを向かい側でじっと見つめるシロクマさん。テレビが見えなくなるほどの大きさで見つめられると食べられなくなる。
「独り言だよね。そっか、ペンと紙なら書けるかも」
パンを咥えたまま、立ち上がろうとすると、シロクマさんが同時に立ち上がる。のどかちゃんは、躾に厳しい家庭で育てられたんだった。食べてる最中に立ち上がるなんていけませんと、愛くるしい瞳で訴えてくる。
「ごめんなさい。食べてからにします」
コクリ、コクリと頷いたシロクマさんは腕を回して膝を抱え、じっと僕を見つめていた。シロクマさんの姿に、のどかちゃんを重ねて見ている僕は、とても幸せだ。
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