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約束
病室に見舞いに来てくれる5歳年下の友人、沙良ちゃんは何度も聞いていたっけ。
『半同棲の彼に言わないで、なんであたしなんですか?』
『結城くんを想ってたの知ったから』
いつか行った居酒屋で、わたしは痛み止めを飲むためにトイレへと立って戻ろうとした時に、確信した。コーヒー店のバイトでも、今でも同じ視線を向けていることに。
『それに視えるって言ってたし』
ホラーが大の苦手な結城くんだから、沙良ちゃんを誘い映画を見終えたときに、実はと打ち明けてくれた。
『知らない人よりいいし、結城くん雷苦手だし、ホラーも苦手だし、本当はさ、黒い髪さげて白い服着て這って会おうと思ったんだけど・・・』
『ヤバいよ。一生記憶に残る。夢にも出る。本城さんの部屋に入れてもらえないよ』
『そ、だからさシロクマさんに魂入れないかな~そしたら、頭撫でられるのに・・ご、ほ、』
この頃には、もう死期を感じてたんだと思う。本当は誰にも渡したくなかったけど、このまま23歳の未来ある人の選択肢を狭めたくないから。
『ギャン泣きしたら、わたしの代わりに慰めて、優しくしてね。それでも疎くてわからず屋だったら、シロクマさんになって会っていると思うから』
『後者になると思うけれど、わからない乙女でい続けますから、その時は、よろしくお願いしますよ』
沙良ちゃんと約束を交わして5年、経過報告は変わらない。それどころか、結城くんは自分のアパートの部屋を退去し、わたしの部屋に住むものだから、想い続けてくれるのは嬉しいけれど、沙良ちゃんのことを思うと複雑なの。
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