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いつも彼のそばで控える秘書、砂森省子はそんな香川の背中を見つめて言った。
「理事長、地元テレビ局から取材の要望が参りました」
それを聞いた彼は、深いため息をついた。
「今度はテレビか。砂森君、悪いが断ってくれないか」
省子は微動だにしない。それはいつもの返事で心得ている。
「人に安らぎを与える私のもとに、私のそれを奪おうとする者も集まってくるとは、まったく皮肉なものだな」
香川は顔半分だけをこちらに見せた。その口許には、微かに笑みが浮かんでいた。
「そうは思わんか?」
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