やすらぎの里

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 それを知った彼女は、やはり理事長室に二人きりでいるとき、香川に問うた。 「それでも彼らが安楽死希望を撤回しないのは、なぜですか」  彼は、窓の向こうにある空に目をやる素振りをした。 「いいかい。死と生はつながっているんだよ。自らの生を肯定し、死ぬことによって、また新しく生まれることが分かれば、死を選ぶことが彼らの希望になる」  彼は、死して一旦身体を自然界に還し、同じ質量と成分を伴った物質の提供により新しい生としてなることは、甦りと呼ぶべきものだという。
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