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チェリーは土煙を上げて、天を仰ぎ地面に倒れ込んだ。
「あーもー死ぬかと思ったー」
「何度もね。だけどギリギリでも初見でラスボスをクリアするなんて大したものよ」
幾度も特殊攻撃と大技を浴びながら、スキルもアイテムも使い果たし、私たちは何とかグレゴリーに勝利した。そして現れた出口を抜け、渓谷のセーブポイントに辿り着いた。
「先輩のおかげですよ」
「私一人で倒せる相手じゃないし、あなたのスキルや装備の鍛え方が上手かったからよ。ちゃんと経験を活かせていたじゃない」
「へへ。そうですかね」
「そうよ。あなた自身のレベルで勝ち取ったんだから。外でも自信持ちなさい。これで私の新人研修も終わりなんだから」
「え、終り!」
チェリーが飛び起きて私に顔を寄せた。
「そ、そうよ。ラビリンス攻略が目的だって最初に言ったじゃない」
「そんなー」
私は困った風な顔を見せたが、本心では惜しんでくれたことが嬉しかった。
「じゃあ次のフィールドだけ見てく?」
**********
「うっわー」
フィールド手前にある宿屋からの眺めに、チェリーが感嘆の声をあげた。見渡す限りの大地に点在する様々な地形や建造物は、今までの比ではないから当然だ。
「これが鋼鉄のレゾンデイトの本当の舞台。ライブアトラスよ」
「目的は何ですか?」
「それは人それぞれよ。散りばめられたライブアトラスの謎を解き明かそうとする人や、ストレス発散に戦いまくる人。あ、ここからは他のプレイヤーと共有だから、出会い目的の人もいるかな。さ、終わりにしましょ」
ライブアトラスを眺めるチェリーの首根っこを掴むと、私は引きづるようにして宿屋に入った。
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