新人研修はラビリンスで ★第187回妄想コンテスト「道」優秀作品

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 体に密着したプラグスーツを着ると、いつも女性らしい曲線のなさを実感させられる。そこにフルフェイスのプラグマスクを着けた姿は女性ライダー。と言うより頭でっかちな宇宙人みたいだ。  装着にミスがないか確認するとダイバープラネットのターミナルリキッドに全身を沈めた。  ダイバープラネットは五感没入型のハードで、私がやっているゲームのプラットホームだ。  ターミナルリキッドで満たされた容器の中で、私の感覚は浮遊感から何も感じなくなってゆく。意識さえも。 **********  体を起こしてベッドに腰かけると、目の前に右手をかざした。そこにメニュー画面が現れた。ここはサイバーファンタジー『鋼鉄のレゾンデイト』の世界だ。どんなに視界が変わっても、感覚ではの区別がつかない。だから私は目が覚めると手をかざす癖がついた。ただ目覚めは現実よりもずっといい。実際には眠っていないのだから当たり前かもしれないけれど。  そろそろ新入社員の五百城(いおき)と約束した時間になる。私は装備を確認した。ボディーペイントみたいな全身スーツの上から、胸と腰回りにだけメカニカルなパーツが付いた姿は、本当の戦闘なら守る気など微塵も感じられない防備だ。  初期設定で登録した顔写真十二枚を使って作られたアバターは、アプリの加工よりも綺麗で満足度が高い。でも首から下はデフォルトのパーツ選択で、文字通り自分の手に余るボディばかりなのが不満だった。  諸々の装備も整えて宿を出ると、丘から見下ろす先に緑に埋もれた機械建造物が点在するフィールドが広がっていた。ここは高い山々に囲まれた最初の冒険の舞台だ。
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