新人研修はラビリンスで ★第187回妄想コンテスト「道」優秀作品

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美波(みなみ)先輩おはようございます!」  元気な声に振り向くと、お腹と足を剝き出しの装備に、顔だけが新人小川(おがわ)さんのキャラクターが立っていた。 「時間通りなのはいいけど、こっちでは名前で呼ばないでもらっていい」 「あ。ごめんなさいカプリコーンさん」  悪戯っぽく舌を出す悪びれないところは嫌いじゃなかった。 「それも面倒ね。先輩でいいわ。あなたはチェリーよね。チュートリアルはやってきた?」 「はい! バッチリです」 「じゃあ、実践といきましょうか」 「これ本当に新人研修なんですか?」  言葉とは裏腹に、小川さんは目を輝かせてフィールドを眺めた。 「うちの会社、ほとんどの社員がリモートなのは知ってるわよね」  私はメニュー画面をいじりながら話した。 「だから全ての評価は、過程じゃなくて結果で決まるの。結果を出せないと、出社組になって就業時間で拘束をうけるわ。出社研修はやったわよね。あんな感じ。で、結果が出せる人はリモート組になって自由に仕事ができる。あなたはどっちが望みかしら?」 「出社組は絶対に嫌です。あんな、時代に取り残された環境耐えられません」 「だよね」  フィールドマップを拡大した私は、スクリーンバックを半透明にして、目の前の風景と重ね合わせた。 「奥にある渓谷の先が次のフィールド。たどり着くには、この中央の建物を抜けるしかないわ。多層階の迷宮(ラビリンス)になっていて、私たちの目的は、その攻略ね。こっちにある町でアイテムが揃えられる。素材が手に入ったら装備の強化もできるわ。あちこちにある遺跡や洞窟なんかは行ってからのお楽しみ。貴重なアイテムや素材があるかもね。どっから行く?」 「先輩。答えになってません……」
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