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「うーん、あー」
報酬をもらって酒場を出ると、チェリーがお腹丸出しで伸びをした。
「あなたの最後の攻撃。覚えてる?」
「最後ですか? ああ、飛び込んだやつ?」
「それそれ。ずっと防御と攻撃を繰り返していたのに、どうして変わったの?」
「もう受けるの嫌だなと思って、だったら先にやっちゃえばいいのかって。だから避けて先に攻撃しようと必死でした」
「ふふ。それがプレイヤーとして、あなたのレベルが上がったてことよ」
「え?」
「レベルや装備は、あくまでも数値の強化でしかないのよ。それをどんなに上げたって、あなたの行動や判断が悪ければ先には進めないわ。だから経験が大事なの。ゲームのプレイで得られる経験値じゃなくて、行動で感じられる経験ね」
「なるほど」
チェリーは真剣な顔で頷いた。
「最初のチュートリアル。そこで感じたり気づいたり、その経験でもう最初の一歩に差がついてしまうのよ。今のあなたなら、ワンフロアはクリアできたはず。そしてさらに経験ができたはず」
「あっ。チュートリアルはただの説明としか思ってませんでした。そうか。そこで何を得られるかで、スタートからプレイヤーのレベルが違ってくるんですね」
「そういうこと。ねえ。それって何かに似てない?」
「なにかに? ……あ、新人研修?」
「勘がいいじゃない。研修が終わって現場で実践。て、なったとき。レベルの差があるってこと。もうスタートはきってるのよ」
「まだ間に合いますか!」
「あなたなら全然間に合うわよ。社会人としても。人としても」
「人としても?」
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