新人研修はラビリンスで ★第187回妄想コンテスト「道」優秀作品

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「うーん、あー」  報酬をもらって酒場を出ると、チェリーがお腹丸出しで伸びをした。 「あなたの最後の攻撃。覚えてる?」 「最後ですか? ああ、飛び込んだやつ?」 「それそれ。ずっと防御と攻撃を繰り返していたのに、どうして変わったの?」 「もう受けるの嫌だなと思って、だったら先にやっちゃえばいいのかって。だから避けて先に攻撃しようと必死でした」 「ふふ。それがプレイヤーとして、あなたのレベルが上がったてことよ」 「え?」 「レベルや装備は、あくまでも数値の強化でしかないのよ。それをどんなに上げたって、あなたの行動や判断が悪ければ先には進めないわ。だから経験が大事なの。ゲームのプレイで得られる経験値じゃなくて、行動(プレイ)で感じられる経験ね」 「なるほど」  チェリーは真剣な顔で頷いた。 「最初のチュートリアル。そこで感じたり気づいたり、その経験でもう最初の一歩に差がついてしまうのよ。今のあなたなら、ワンフロアはクリアできたはず。そしてさらに経験ができたはず」 「あっ。チュートリアルはただの説明としか思ってませんでした。そうか。そこで何を得られるかで、スタートからプレイヤーのレベルが違ってくるんですね」 「そういうこと。ねえ。それって何かに似てない?」 「なにかに? ……あ、新人研修?」 「勘がいいじゃない。研修が終わって現場で実践。て、なったとき。レベルの差があるってこと。もうスタートはきってるのよ」 「まだ間に合いますか!」 「あなたなら全然間に合うわよ。社会人としても。人としても」 「人としても?」
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