公演を控えた俺が大正時代に転生して溺愛されました。

4/11
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「おはようございます」 静子はドアを開けて挨拶をすると、驚いたようにみんながこっちを見た。 大きなテーブルには豪華な朝食の品々が置かれている。 「あら?お姉様はいつもキヨさんと一緒にあちらで食べるんじゃなくて?」 流行りの綺麗なワンピースを来た少女が意地悪な笑顔を向けてくる。 妹の久子だ。 キヨに聞いてはいたがどうやら静子はこの家で虐げられていたようだ。 しかし、俺は優雨人!男だ! 「私もここの娘よ。どうして使用人と一緒の食事か意味がわからないわ」 いつもなら無言で立ち去る静子に両親と久子は驚いてこちらを見ている。 久子は怒りに震えながら 「お姉様はもうすぐこの家を出ていくのだから、少しぐらいの我儘は仕方ないわね!」 そう言い放ち、こちらを見下した顔で部屋を出て行った。 父も顔を真っ赤にして 「いい加減にしないか。全く久子と違って見た目も才能もないお前が大きな口を叩くんじゃない!」 「食事が不味くなるわ」 母親までこれだ。 俺は呆れて、残った残飯を勿体無いからと食べ始めた。 美味しいと言いながら食べる俺を不憫に思ったのか、キヨは割烹着の裾で目頭を拭いている。 見た目か… 自分が着てる古びた着物に目をやった。 静子は相当酷い目にあってたらしいが、俺は負けるもんか!!! そんな闘志を燃やしていると、キヨが爆弾発言を放つ。 「お嬢様、婚約まであと3日しかありません。当日は久子お嬢様の古着でいいと旦那様はいいますがあまりにも不憫で…顔見せもなく婚約なんて…」 ますます涙声のキヨに対し、俺は! 「婚約!?何それ、聞いてない!?」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!