jealousy

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それからというもの 彼はちょくちょく我が家に顔を見せるようになった 礼儀正しく 穏やかで いつも紳士的な彼は 祖母にも母にも気に入られ ついには あの厳しいSACHIまでもが彼の虜となっていったのだ 他愛のない話をして笑い転げたり ボードゲームをして 勝ち負けに一喜一憂したり 私達は 随分前からの幼馴染みのような関係が続いた 彼のすごい豪邸が近所だったこともあって わりと気軽に往き来できた 人と関わることが億劫な私が 彼とだけは 普通でいられた 不思議なくらい… それでも 時々、彼の瞳が寂しそうに揺れるときがあった 私には考えられないような環境に身を置いている人だ 抱える憂鬱は計り知れないものであろうと思った せめて、ここにいる時くらいは 屈託なく笑い 嫌なことや 彼にまとわりつくしがらみを忘れられますように… 私は心からそう願った その頃の私は この気持ちは 彼に対する友情だと信じて疑わなかった…
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