三年前

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三年前

“お嬢さま! お仕度のお時間です” “まぁ!! またそんなことを!!” SACHIが大袈裟に叫んでいる 私は、髪もとかず素足で庭の芝生の上に立って月を見ていた “SACHI! 月がとっても綺麗よ! 神秘的だわ…” “お嬢さま! ささ、早くお拵えいたしましょ 今日はどうしてもお嬢さまもと 旦那様が仰ってましたでしょ?“ “それに… 今宵は明子様もご一緒されるそうですから このSACHIが、 あの忌々しい明子様に一言も文句を言わせないようにお手伝いいたしますよ“ SACHIは 私が物心ついた頃からずっと私の側にいる教育係とも言うべきナニー 母と祖母を除く、ほとんどの家族が 私の事を異端児扱いする中で 常に優しく…時には厳しく 私の傍に寄り添ってくれている 明子様とは 私の兄嫁で 良家の子女だ 美人でとても華のある女性だ 社交的で 自分磨きにも余念がない いつ会っても美しく着飾り 綺麗に髪を整え 鈴の音のようにコロコロと笑い 完璧なまでのコミュニケーション力を発揮する つまり 私とは正反対の存在なのだ… その明子様だが 悪い人ではないのはわかってるのだけど 自分に厳しく 他人にも手厳しい 特に 私には…
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