異端児

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ドアをノックする音でハッと目を覚ました 変な体制でうたた寝をしたせいで 首と背中が痛い… ドアの外で “美兎ちゃん? 寝てしまったの?” 私は静かにドアを開け 母を笑顔で迎え入れた “今日は疲れたでしょ?” “驚いたけど大丈夫よ… それより ロバートの足を踏まずにダンスを踊れた事を誉めてちょうだい” 私は母におどけてみせた 母は少し潤んだ目で私を見つめると 優しくハグをして “美兎ちゃん? 人に優しくできる美兎ちゃんが大好きよ 心のなかでは悪態をついても 絶対に言葉として外に出さない 人を傷つけることは絶対にしない…” ………… “でもね…” 母はまっすぐに私を見て諭すように 私の髪を撫でながら “美兎ちゃんは 美兎ちゃんをの気持ちを一番に考えて良いのよ 無理に笑わなくても良いの 我慢しないでね” “随分強引なことをされたけど お父様なりに、あなたの事を心配しての事だと思うのよ 今でも決して正しい事をなさったとは思っていませんけどね いつか… 美兎ちゃんが、本当に好きな人ができて その方が、美兎ちゃんの事を大切に思ってくれて… 愛してくれれば私もおばあ様も、こんなに幸せな事はないのですよ もちろん、お父様もですよ” “美兎ちゃんはもっと自分を評価してあげなさい あなたはとても素晴らしいのよ それは、家族全員が認めている事だから” “美兎ちゃんは人がたくさん集まるところへ出かけるのが好きじゃないことはわかっているのよ でもね 今でしか経験できない事ってあると思うの ………価値観が違うと言ってしまえばそうだけど たくさんの人と話したり関わって いろんな事を柔軟に吸収できる年頃でもあるの そのチャンスを逃さないでほしい 失敗したって良いのよ そうやって人は成長していくのだから… 美兎ちゃんの良いところは 私達家族はみんな認めているのだから 家族を思うがあまり美兎ちゃんがいろんな事を諦めていくのはとても悲しい” ポロポロと涙が零れた 諸藤家の異端児… 私は親戚縁者、殆どの人からそう思われてきた 女の子らしく着飾ることも 上目使いに甘えたような顔をすることも 人と関わることすら苦手な自分… 人の偽善を何故か直感的に感じてしまう自分… 私の存在自体がお荷物のように感じていた… 常に 家族に迷惑をかけないように思っていたような気がする それが… 習慣となり… 私の性格になっていた 人の集まる所へは極力行かない それが 家族への私なりの気遣いであり ひいては私自身の防御策でもあった その事が かえって家族に心配をかけていたのかもしれない… “自分の気持ちを大切にするのよ 1回くらい、ロバートの足を踏んでも良かったのに” 母は悪戯っぽく右の眉毛を上げてニヤリと私に笑ってみせた 母がこんなことを言うなんて やっぱり 血はつながってる… その日 私はここ最近眠りが浅かった事など嘘のように深い眠りについた
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