ATSUKO

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ATSUKO

キャンパスのカフェテリアで 私はボーッと外を眺めていた… テーブルの上でアイスコーヒーの氷は溶けつつある コンコン… テーブルをノックされて見上げるとゼミ仲間のATSUKOだった… 彼女はお祖父様がイタリア系アメリカ人のクォーターだ 切れ長の目を強調するように引かれたアイラインが、とても似合ってる ヘアースタイルは真っ黒なボブだ 華奢な体つきながら 自分に似合うスタイルもわかっていて アジアンビューティそのものだ 彼女がキャンパスを歩くと 男子学生はもちろん女子学生ですら羨望の眼差しを送る 女である私でさえ彼女に流し目されると言葉がつまるほど色っぽい だがこのATSUKO 性格はすこぶる男前で… そのギャップが私としてはたまらない なにかと馬が合い 私の難しい性格にもベタベタとではなく 付かず離れず なにげなくそばにいてくれるのが心地よい 時間があえばランチはいつも彼女と食べることが多い “食べないの?” 言い終わる前に 私のサンドイッチをパクついてる “食欲がないんだよね…” “なになに…恋煩い?” 悪戯っぽく口角を上げて私を見つめる そんな事はあるはずないよねと言わんばかりだ… “そう…かもね…” 私の言葉に テーブルに腰を下ろしていた彼女は 崩れ落ちそうになるくらい驚いた… “だ…誰が? まさか…美兎?…” アワアワと目を丸くしてわたしを見つめる… “わからないんだよね… 恋したことないから…” “は?” “今まで?” “うん” “一度も?” “うん” “あんた… 世界遺産になれるわ…” ATSUKOが呆れたように深いため息をつく… それに続いて私も深いため息をついた…
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