三年前

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今日は父の仕事関係のかなり大きなパーティーがあるそうで 先月、めでたく二十歳になった私は 今夜がいわゆる社交界デビューというわけだ… “どうでもいいよ…SACHI こういうの苦手なの…“ “なりません❗” SACHIがピシャリと私を黙らせる こういう時のSACHIは 凛としていて 何者にも隙を与えない威厳を漂わせる “はいはい… 着物だけは嫌よ お料理が食べれないから” SACHIは呆れたように軽くため息をついて 濃紺のベルベットと オフホワイトの切り替えのあるイブニングドレスを“いかがですか?”と言いながら私をふりかえる “嫌だと言ってもそれでしょうに…” そう言いながら私はドレッサーの前におとなしく座る… まるで、猫…いや…虎に見据えられたネズミのように… SACHIがパンパンと手を叩くと 慌ただしく私の髪を結う者… 私の顔に化粧をほどこす者… あ~……… 耐え難い… 一番苦痛の時だ… 仕上がった私をSACHIが確認する “お嬢さま お美しゅうございます いってらっしゃいませ” 着物姿のSACHIが深々と腰を曲げる (合格か…) そう心のなかで呟くと エントランスで待つ父が “馬子にも衣装だな”と嬉しそうに微笑む (うるさいぞジジイ…) また心のなかで呟くと 父と共に迎えの車に乗った
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