再会

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“美兎 当日は着物にしなさい” 父が言うと “あら🎵 いいわねぇ 私はお茶を点てようかしら”と母が言う… (最悪…) 最後の頼みの綱、祖母までもが “お琴を弾こうと思うのだけど何がいいかしら?” (ダメだこりゃ…) 結局 私の願いは虚しく砕けちり 当日を迎えた 昨日から 今日着る着物が鴨居に掛けられている 総絞り濃紺の振り袖だ この着物は嫌いではない 柄も鶴亀、松竹梅、御者車とおめでたいものをこれでもかと散りばめてる割りには 濃紺の色のお陰で仰々しくなく品がある 帯は西陣織の金糸で 濃紺に映える 髪を結い 化粧をほどこし 今はSACHIに着付けてもらっている 豪華に結んだ帯が華やかさを増してくれている “お嬢さま お美しゅうございます” SACHIの合格点をいただいて我が家の客室に向かった ホテルの会場をとりたがった父を 兄に説得してもらい 母の茶道具や 祖母のお琴を庭で野点のようにこしらえてもらい 極々、身近な人だけをお呼びして開催することとなった 父は夕べも機嫌が悪かったが 個人的なお祝いにおつきあいさせるのもと最後は祖母の一言でガックリとうなだれた 心が折れる音って聞けるとしたら今だろうと思った それでも 父の人望か はたまた、大人の事情か 庭を開け放った客室リビングには総勢30人ほどのお客様が見えていた ほとんどが現地の方なので 着物姿の私を見て 口々に “Beautiful!” “Amazing!”と褒め称えてくれる 私はアメリカ人のこういう少々オーバーな感情表現も苦手で どうお返事していいのか戸惑ってしまって 結局 “Thank You…”と控えめに言うことくらいしかできないのだ 祖母のお琴が “荒城の月”と“桜”を奏でるなか 母がお茶を点て和菓子と一緒にふるまった 母の点てるお茶も 祖母のお琴も意外と好評でホッとしたころ 玄関にサプライズゲストが到着した
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