第三章〜廃れた倉庫(アスナー)

9/9
前へ
/126ページ
次へ
9 有羽は、カートスに言った通り、彼がそばにいてくれるから自分は頑張れると心に刻んでいた。 カートスにはきこえない嘆きの声は、揺さぶりかけるように断続的に続いていた。 カートスと会話をしている間、有羽は耳障りな嘆きの声から気をそらせることが出来、むやみに心が傷むことはないこと。 それは、カートスを大切な友人として守りたい想いがある限り。 自分の信じている道を誤ることはないと、信じている。 穢れに堕ちてはいけない。 たとえわずかな正しいことがあったとしても。 穢れの囁きに通じることに身を委ねること。 自分自身が萌す信念を曲げることになる。 アスナーの様々な韻を含んだ言葉があっても、以前から自分を支えてくれた大切な人の言葉を信じているし、心に刻んでいる。 現実が過酷で投げたいことばかりでも。 大切なもののためならばともかく、自分自身のことで負けて咽び泣くことはしたくない。 常日頃からの決意。 有羽は、今も心へ新たにしていたーー。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加