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「な、なにこれ?!」
ツバメのセーコは、街の変わりように仰天した。
「見ての通りだわ。
ツバメのセーコちゃんが巣を作ってた商店街は、ここに複合施設のあるタワーマンションが建つために全部取り壊されたの。」
去年までここにあった筈の商店街の片隅でカップ麺の容器を利用していたツバメの巣で、ツバメのセーコは営巣をしていた筈が、人間に全て取り壊されて、あるのは建設準備の囲いがしてある広大な空き地だった。
「ここの商店街の人間の住民達は建設反対してたんだけどね・・・やっぱり覆されなかったわ。
仕方無いよね。みーんな隣町のショッピングモールか文明の力のネットショップに流れちゃったもん。」
「解ってたわ・・・」
ツバメのセーコはボソッと呟いた。
「だって、何れはこうなると思ったもん。あの商店街は人気が無くて閑散としてたからね・・・」
ムクドリのミヨコは、ツバメのセーコのその悔しそうな顔を見逃せなかった。
「大丈夫よ。私だって今、人間が危害を加えて来ない棲みかを探しているんだし・・・一緒に新しい巣が造れる場所を探そうよ!!ねっ!!セーコちゃん。」
「ねぇ・・・この街に本当にあるの・・・?私もう人間に巣を落とされるの嫌よ・・・」
ツバメのセーコは弱音を吐いて半べそをかき始めた。
その時だった。
「おーーーーい!!セーコちゃんー!!いたいた!!ここに居たんだ!!」
遥か向こうから、1羽の雄ツバメが飛んできた。
「あっ!!カンマさん!!良かった!!無事だったのね。あの時、台風に巻き込まれた時もうダメだと思ったわ!!」
「あの時心配かけてごめんなセーコ!!そうそう!!見つけたぞ!!新しい巣が造れる安全な場所!!
あの商店街が消えた時どうしようと思ったけど、簡単に見つかったよ!!」
「本当?!えー?どこどこ?!」
笑顔を取り戻したツバメのセーコは番の雄ツバメのカンマに連れられて、一緒にランデブーして飛んだ。
「あー!!私も連れてってー!!」
ムクドリのミヨコもツバメ達の後を追って飛び立った。
また今年も、ツバメのセーコとムクドリのミヨコとの友達同士の日々が始まった。
夏にまたツバメのセーコが南の国に旅立ち、しばしの別れが来るまで。
そして、次の春に再会出来る事をお互い誓って・・・どんなにこの街の様子が変わっても。
~また会えたね、ツバメさん~
~fin~
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