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あれから1年。
私はこの日を待っていた。
今は桜の花びらが花吹雪となる季節だ。
また、新年度のはじまりだ。
慣れない人の流れが駅を混乱させる。
満員電車は地獄だ。
学校も新学期。提出物も多いし、クラスが変わり担任も変わりワクワクとドキドキの季節だ。
私の職業は主婦だ。
夫はサラリーマンで、子どもは、小学4年生と中学2年生だ。皆それぞれ新年度を楽しんでいる。
夫は部下の指導に力を注ぎ、子どもたちは新しい学年を楽しんでいる。
私はといえば子どものPTAや、クラス会など親が参加しなくてはならない行事と週3回働いているスーパーのパートの仕事で心をすり減らしている。
主婦も中々楽ではない。
そんな私の唯一の楽しみといえば月1回行く、ショッピングモールへの買い出しだ。
このショッピングモールは何でもそろっている。
服に家電、雑貨などあらゆるショップが私たちを楽しませてくれる。
私のお目当ては、スーパーだ。
肉に野菜、魚、米。このスーパーは安くて量も多い食材がありファミリー層に人気だ。
私は夫や家族にカートをお願いし自分はあちこちの
食材を見ては、スマホでコスパを計算してカートに入れていく。スーパーは女の園だ。
今日も久しぶりに、モールにやってきた。
夫の運転で30分。
モールの駐車場に足を踏み入れた瞬間私のスィッチは戦闘モードへと切り替わる。
この空気が最高だ。
私にとって今日は特別な日だ。
いよいよ、再会するのだ。
待ちに待った。1年は実に長い。
私は、車を降りるとお目当ての店へ急ぐ。
本当は走って行きたいが、家族をおいて行くのも気が引ける。
夫も子どもも、身長が高く足も長いくせに亀のようなスピードで行動する。
あと、3メートル。
いよいよ、対面する。
店は混んでいた。私みたいに年に一度を楽しみにしている人がたくさんいる。
私もその行列に並ぶ。
ドキドキする。
夫との初デートの時みたい。
今じゃ夫にはドキドキしないけど。
あと2人。
いよいよ私の順番だ。
この白いフワフワした身体。
白い身体の奥に薄く見える真っ赤なあなた。
やっと再会できた。
「また、会えたね。」
わらわら堂の冷えた大福、初恋だ。
このわらわら堂は私たちの住んでいる地域にはお店がない。春になるとこのショッピングモールに姿を現し、いちご大福1つで勝負をする。
1日何個売るのかはわからないが、1ヶ月間の出店期間に行列が途切れる日などない。
私は自宅用と、すぐに食べる用を買う。
家族は呆れるが、知ったことではない。
この大福のためにする私は頑張ってきたのだ。
パート先の先輩のいじめにも耐え、PTAの人間関係だって我慢してきたのだ。
私たちは、ショッピングモールの中庭のベンチに移動することにした。
このショッピングモールの良いところは、中庭にベンチが多数あり簡単な遊具もある。公園みたいだ。
私たち家族は、ベンチに座り大福を食べた。
冷たい口ざわりと、甘い中にいちごの酸味が程よく効いていて、何ともおいしい。
私は笑顔で食べた。
夫が私の頬についた粉をハンカチで拭いてくれた。
甘い春の日の休日。
私はあと何回、大福に再会できるのだろうか。
そして家族と何回こうして大福を食べれるのだろう。
日常生活の大切さを考えながら幸せな時を過ごす。
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