幼少期の卵

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 もしかしたら、捨てられた人間の芽は太陽のところに行って、そこで受精するのかもしれない。そして大きな受精卵になって、あまねく生まれいでることのできた人間たちをじっと見つめているのかもしれない。  一度幼少期に頭の中につくられた映像はもうずっと、高校生になっても真実であるかのように思われてしまう。  高校生になった私は電車を降りて相変わらずの田んぼ道の間の細い舗装道路を自転車で走りながら、夕焼けを見つめ続ける。  最近は変化が生まれてきた。  以前より胎児はくっきりと見える。まるで息をしているようにうごめく。  ふと思う。  ああ、あの形、日本史の教科書に出ていた勾玉の形に似ているな。  勾玉は生まれなかった胎児を象ったものかもしれない、などと勝手に考え始める。  私は自分の体が女になっていくことにどうしても抵抗感を持っていた。
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