兎と奸物

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かつて、兵には罪人を充てることが多かった。 危険な戦場に出たがる民は少ないからだ。 けれど凱歌に従えば話は別だ。何も持たずに出兵しても、帰りにはひと財産を成すことができる。 国と国とが潰しあう、長い戦乱に倦んだ民は、戦火に焼かれた農地を捨て、こぞって凱歌の軍への入隊を望んだ。 怪異を撃退した一件から、凱歌はさらに強さを増したように、杞梓には思えた。 一たび兵を挙げれば、内乱は三日を出でずして治まった。 隣国と戦えば、敵兵の血が河を成し、屍が山を作った。 無敗の噂は広まり、凱歌の旗を見ただけで、城を明け渡す王さえいた。 杞梓と凱歌の祖国は、着実に版図を広げていった。 度重なる武功により、民心を集めた凱歌にとって、己の君主とは、やがて形ばかりの傀儡に過ぎなくなる。 そこから時を待たず、波濤のごとき賛意の声が、凱歌を至尊の位に押し上げた。
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