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でも、一つだけ不思議なことがあるんだ。僕のお母さんには「ヴィオラ」という名前というものがあって、お母さんにご飯をあげたり散歩に連れて行ってくれるおじさんが何度もその名前を呼んでる。でも、僕らには名前がないんだ。
そしてたまにおじさんの家に知らない人がやって来て、僕の兄弟を連れて行ってしまう。どこかへ連れて行かれた兄弟にはもう会えなくて、悲しくてある日僕はお母さんに言った。
「お母さん、どうしてみんないなくなっちゃうの?」
「幸せになるためよ。あなたもいつか幸せになるのよ」
お母さんはそう言って、僕の体をいつもより長く舐めてくれた。その時、おじさんの家のドアがノックされる。
「アーサー、こんにちは。ほらお前も挨拶しなさい」
「こ、こんにちは」
おじさんの前に知らない男の人と女の子がいる。女の子の目は空みたいな青で、髪はおじさんがたまに食べているはちみつみたいだ。
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