episode14.5

3/5
前へ
/315ページ
次へ
自分にこんな欲があるとは思わなかった。少し前までの俺は、異性を見て興奮することなんてなかったからだ。 京香の身体は俺を簡単に刺激した。彼女の赤く染まった頬も、熱を帯びた綺麗な身体も、額に滲む汗も、静かに零れる涙も全てが愛しかった。 上手く出来たかと問われたら、首を縦に振ることはできないが。終わったあとに俺の腕の中で「旭さん…大好きです」とひと言放った京香が、幸せそうに眠りについたのを見て、胸がいっぱいになった。 無理をさせてごめんな、と心の中で呟きながら「俺もだ」と囁いて彼女の額に口付ける。きっと彼女の耳には届かなかっただろうが、小さな寝息を立てながら顔を綻ばせた寝顔が、今も頭から離れない。 二輪の言う通り、“彼女”という存在は悪くないと思う。むしろ、あの日からずっと心は満たされている。 …いや、満たされているのは、彼女と出会ってからずっとなのかもしれない。京香に“秘密”を知られた日から、俺の世界は変わった。もちろん良い方向に。 兎にも角にも、ひとつ言えるのはアレ(・・)を用意しておいてよかったということ。 前日に途中でやめてしまったことが、京香を傷付けていたとは知らず。あの日、この男に変な相談を持ちかけたせいで、危うく3ヶ月我慢するところだった。 「ほんと感慨深いぜー。でもお前はまだ未熟者だからな。先輩のこの俺が何でも教えてやる。遠慮なく頼ってくれ」 「いや、遠慮しておく」 頼る先はこの男ではない。今回のような誤解が生まれないよう、今後は必ず本人と話し合うと決めた。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12080人が本棚に入れています
本棚に追加