元彼のシュンスケ

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 「元気そうで良かったよ。今、彼氏いるの?」  俊介の問いかけに「関係ないでしょ。仕事中だから話しかけないで。トイレそこだよ、早く行けば。」と、そっけなく返した。  「今日は仕事、何時まで?」  私は俊介に背を向けて無視を決め込んだ。  俊介は「冷たいなー…」と言って、トイレに入って行った。  私はその様子を横目で追って、深くため息を一つついて強張った体を緩めた。  ひとたび嫌いになると、どこが好きだったのかわからなくなる。楽しかった思い出もあるはずなのに…  どうしてあんな人と二年もつき合っていたの?  と、過去の自分に問いただしたい衝動に駆られた。  「紗雪、大丈夫?なんかあった?」  雅人さんが私の背中をポンと優しく叩いた。  「え?」  「眉間にシワ寄ってるよ。」  「あ、嘘、ごめん…切り替えるね…」  「客に何かされた?大丈夫?」  「ううん、違う。知り合いがいただけ…」  「そうなの?大丈夫ならいいんだけど…あ、そろそろ終わるね」  会場は「(えん)もたけなわではございますが…」と選出された人の挨拶と一本締めでお開きとなった。  皆それぞれ楽しそうに、赤い顔でヘラヘラ笑って帰っていく。  遠くから「三次会行く人〜」と、次の宴の誘いの声が聞こえた。夜はこれから組は朝まで飲み明かすのだろう。  俊介は、私が雅人さんといたので、トイレから出ても話しかけては来なかった。いつの間にか姿も見えなくなって、私は気が抜けてホッとした。  もう、顔も見たくない。  最後の客を送り出すと「お疲れ様です。」と、先生が来店時と何も変わらない様子で挨拶してくれた。  私は、その顔を見ただけで、さっきまでの嫌な気分がどこかへ飛んでいくのを感じた。
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