祝福のジカン

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 「小林さん…今日は僕らの結婚式にわざわざありがとう」  先生が戻って来て、里穂へ苦笑いを浮かべて挨拶をした。  「先生~!おめでとう!まさか、こんな日が来るなんてねー…同窓会とかしたらみんな卒倒するんじゃない?」  里穂はそう言ってアハハと笑う。  里穂に悪気は全くないのだが、そんな状況を考えると、きっと好き勝手に言われるんだろうなと急に嫌気がさした。私は平気だけど、先生は嫌だろうな…  先生もきっとその状況を想像しただろう。「そうかもね、驚くだろうね」と、先生は困ったように眉を下げて笑った。  私はその先生の困り顔を見て、一瞬胸がチクンと痛んだ。  だが、先生は間髪入れずに「でも、お互い惹かれ合って結婚したから、周りからはどう思われても僕は平気ですよ」と言ってのけた。    あぁ、もう、本当にこの人は…  私の欲しい言葉を欲しい時にちゃんとくれる。  私は何も心配することが無いんだなと思った。  「ひゃー!紗雪、愛されてるぅ!!ご馳走様」  里穂はキャッキャとはしゃいで、先生と私を交互に小突く。  凌空は里穂の真似をして「ごっちょーさまぁ」と、私の腕の中で手を合わせてお辞儀をした。  子供、可愛いな…と、そんな気持ちを共感したくて先生を見ると、先生も優しくニコニコ笑顔で凌空を見つめている。  私たちも、いつか近い将来、パパママになれるかな…   なんて、結婚したばかりなのに、ちょっと気の早いことを考えてくすぐったい気持ちになった。  先生はどう思っているのかな…  落ち着いたらちゃんと聞いてみよう。    パンパン!  雅人さんが大きく手を叩いて、来客の注目を集めた。  「では皆さーん、楽しくご歓談中失礼しまーす!宴も竹縄ではございますがこの辺で新郎新婦から一言ずつ挨拶をしてお開きとさせていただきまーす!それでは、紗雪から、どうぞ」  私は、ふぅーと深呼吸して緊張する気持ちを落ち着かせた。  そして、考えていた言葉を心を込めて伝えた。
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