好きのハジマリ

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*  杏ちゃんに言えなかった「ありがとう」を、後悔しないように、いつも言える人になろうと思うようになったのは先生がきっかけだった。  教師だからというより、一人の人間として、寄り添ってくれたことが嬉しくて、私はあの後から、気づけば先生を目で追っていたし、目が合っただけで胸が高鳴るようになっていた。  親にも言えないこの恋心を、杏ちゃんの遺影の前で何度も相談したっけ… 写真の中の杏ちゃんは、ただ笑って見つめてくれるだけだけど、今でも容易に思い出せる「紗雪、頑張れ」「紗雪、後悔しないように生きなさい」の声が、 いつも私の背中を押してくれる。  先生はあの時のことを覚えているかな…  聞いてみたい気もするけれど、聞けるわけがない。  私はあの頃のことを本当に感謝している。  本当は伝えたい「ありがとう」だけど、先生と恋人でいたいから…  これから、違う言葉にたくさんの『ありがとう』を乗せて伝えていこう…
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