後輩のバイトくん

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 さすがに連休の疲れが残っていて、水曜日はしっかり一日休養した。  久々に昼過ぎまで寝て、部屋の掃除と大判の洗濯物を済ませて日用品の買い出しに行ったりしていたら、Tesoroに行く元気もなくて、夕方になって急な睡魔に襲われた。そして目覚めたら20時を過ぎたころだった。  先生から19時に『今日は来ないのかな?疲れてるよね。無理しないでゆっくり休んで。』と、こつぶちゃんの写真付きでLINEが来ていた。  それからもう一件。拓士からのLINEだ。  『結城先生がTesoroに来ました。俺のこと覚えてるって!さゆゆん…紗雪先輩の話はあえて何もしませんでした。ご安心を!』  いちいちこんな報告しなくていいのに…  なんだかそのうち脅迫されるのではないかと、嫌な予感がする。  とりあえず『わざわざ、ご報告ありがとう。』と返しておく。  先生には『ごめんなさい。寝ちゃっていました。』と返すとすぐに既読がついて、電話がかかってきた。  『どうも、結城です』  先生の声が耳元に直接届いて、なんだかこそばゆい。 先ほどまでの杞憂がどこかに飛んでいったかのように、嬉しくて浮かれてしまう。  『いつもの癖で水曜日に行ったけど、紗雪さんの出番は火曜日なんだね?』  そういえば、ちゃんと勤務の日を伝えていなかったことに気づく。  結構、お互い知らないことがまだまだ多い。  「そうなんです、初めて会った日はたまたまで…」  『そっか、今度から火曜日に行けるように調整してみようかな…』  「そんな、嬉しいですけど、わざわざ…」  『僕、史学部の顧問やってて…部員五人しかいないし、ほとんどが幽霊部員だから曜日の変更問題ないと思うんだ…』  先生が部活の顧問をしているっていうのも、今初めて知った。それも史学?  「史学って…歴史の史ですか?」  『そう、社会科の教師なので…地味でしょう?でも面白いよ?』  先生が歴史の話をし始めると、不意に中学の頃の授業風景を思い出した。  「歴史と言えば、中国の王朝の歌とか歌ったりしたっけ…」  『あぁ、アルプスの歌に合わせるやつね』  そう、先生が教えてくれたんですよ…と、心の中でひっそりと思う。  『次の日曜日は何か予定ありますか?』  「今の所、なにも…」  『じゃあ、どこか行きましょうか』  「どこかですかー…」  『行きたいところない?』  「えー…どこかー…は行きたいところないんですか?」  『……ーーそう言われると出ないね…』  私は全身から血の気が引くのを感じた。  私、今、って呼んだ?呼んだよね?  嘘、え、どうしよう…気づいた?  「が…学校の授業の話したから、なんかって呼んでみたくなっちゃいました…あはは…」  もしかしたら気づいてないかもしれないけど、どうにかそれらしいことを言って誤魔化した。  『え?あぁ、そっか…』  私は緊張で変な汗をかく。  あぁ、電話で良かった…どうにか誤魔化せた…はず…  我ながら、よく言葉が出てきたなと感心した。  『じゃあ、日曜日どこに行くか考えておいてください』と言って、先生は電話を切った。  あー…焦った…  拓士からバレることばかり懸念してたけど、墓穴掘る可能性も捨て切れないなと思い、身を引き締めなくてはと思った。
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