愛しいジェラシー

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 「お腹空いてる?何かつまめるものと、お酒買っていこうか…」  先生のマンションへと向かう道中、コンビニに寄る。  お泊りスキンケアセットを手に取って、女性用ショーツの前で手が止まる。数秒考えるが、選択肢はないのでそれも一つ手に取った。  日頃、コンビニに行っても飲み物や食べ物くらいしか買わないので何とも思わなかったけれど、世の中には急なお泊りになる人っていっぱいいるんだな…と、お泊りセットやコスメなどが陳列された棚を眺めて感心してしまった。  なんか、そんなことを考えちゃう時点で、若者失格か…  「何か欲しいものあったら、入れて?あと、飲み物、選んで…」と、先生が自分の買いたいものを入れた買い物かごを持って声をかけてきた。それから、私が手にしている歯ブラシに気付いて「歯ブラシは先週のとってあるよ」とコソコソと耳打ちしてきた。  ――え、とっておいてくれたの?  お泊りすることを考えていたということだよね…  そう考えると、なんだかちょっぴり気恥ずかしくなって飲み物のコーナーへと逃げた。 *  「疲れてるのに、急にごめんね…」  「いえ、楽しいです」  「そう?良かったー」  コンビニを出た後、買い物袋を二人で一緒に持って歩く。  先生が当たり前のように持ってくれたのだけれど、私が一緒に持ちたいと言ってのことだ。  急なお泊りデートに完全に浮かれて、恋人っぽいことをしたくなった。  「ちょっと張り切っていっぱい買っちゃいましたね…」  「そうだね。重くない?」  「ちっとも!それより、いつも奢ってもらってばっかり…」  「いいの、誘ったの俺だから」  あ…”俺”になった。  先生が自分を”俺”と言うと、なんだか素を出してくれていると思えて嬉しくなる。そんな些細な事でも、だんだんと距離が縮まっているなと感じる。  先生のマンションはTesoroから本当に近くて、地下鉄駅とは反対方向に徒歩7分といったところだ。  周りにはマンションが立ち並んでいていて、先生の部屋は12階建ての建物の3階の一室で、賃貸だと言った。  「借りる時8階も空いてたんだけど、実はちょっと高い所が苦手で…」と苦笑いを浮かべた。  「どうぞ」と招かれた部屋は、つい先週も来たばかりなのだが、夜の雰囲気はまた少し違って感じた。  掃き出し窓はグレーのカーテンで閉ざされており、明かりをつけても昼間よりも暗くてちょっぴりムーディーだ。  「手洗ったら、ソファー座ってて」先生はそう言って、シンクで手を洗ってから買ってきた飲み物を手早く冷蔵庫にしまった。  そして「最初これでいい?」と、私が選んだ缶酎ハイの一本を私にくれる。  テーブルにおつまみも用意してくれて、至れり尽くせりだ。  「じゃ、乾杯。」と、缶をぶつけて、私たちの夜が始まった。
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