愛しいジェラシー

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 目覚めたら好きな人の寝顔が目の前にあるというのは、なんと幸せなことだろう…  ついに、結ばれてしまったんだ…  私は喜びを噛み締めて、昨夜のことを思い出して一人照れながら、先生を起こさないように寝顔を見つめた。  すると、みるみるうちに先生がニヤケ出して、狸寝入りだとわかった。  「もしかして、先に起きてました?」  「えー?今起きたけど…」  「…嘘だ」  「だって、可愛いから…」  「…う」  「う?」  「…嘘だ」  「本当だって…」  先生は私を自分に寄せて、ギューっと抱きしめてくれる。それから、髪を手櫛で梳いて「紗雪さんの髪、俺のシャンプーの匂い…でも…」うなじに鼻をつけて「なんか甘くていい匂いする」と言って唇を這わす。 私は「くすぐったい」と笑った。  朝からこんなに幸せで、何だか少しこわいくらいだ。  しばらく、ベッドの上でまったりと過ごしてから、先生が「今日どうしよっか…外は雨だね…」とぽつりと言った。  そう言われてみれば、カーテンは開いているというのに薄暗い。それに、窓の外からポタポタと雨だれの音が聞こえてくる。  「んー…とりあえず、起きましょうか」  私が先生の腕から抜け出して、スウェットのズボンを探していると、先生が遠慮がちにTシャツに絡まった私のブラジャーを差し出した。  「やだっ」  私は先生からそれを奪い取って布団の中に隠した。  私が着ているTシャツ、よくよく見ると昨日先生が着ていたやつだった。  「間違って着てたんだ…」  「そうみたいだね」  そう言ってスウェットを履いて、ベッドから降りると、先生はクローゼットの中から別のTシャツを出した。  先生の引き締まった背中を、うっとりしながら眺めた。  弓道は今はやっていないと言っていたけど、筋トレとかしているのかな?余分な贅肉などなく、引き締まっていてかっこいい。  私もストレッチくらい…  ―――あ!明日バレーサークルに行かないといけないんだ…  急に思い出して、みるみるうちに現実に引き戻された。  先生に言った方がいいかな…言うべきだよね…  拓士と行くしな…まさかダメとか言わないよね?  そう考えた途端に気が重くなった。  もともと嘘をついたり隠し事をすることが得意ではないのに、口裏合わせを頼んだばかりにこんなことになってしまって…ストレスでしかない。  だからといって、今更「実は私、先生の教え子なんです」なんてどの面下げて言えるだろう?  それに、元生徒との恋愛に対する嫌悪がないなんていう保証がない。  元妻と元生徒とのこと、まだ引きずっていたりするのかもしれない…  「お腹空いたね。昨日買ってきたパン温めて、なんかスープでも作ろうか」  先生の無邪気な笑顔を見て、胸がチクリと痛んだ。
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