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先生と一緒にミルクスープを作って、コンビニのパンを温めて、ブランチにした。
雨降りで、部屋もひんやりと寒かったので、先生はエアコンをつけてくれた。
それから、靴下とカーディガンを貸してくれた。何もかもぶかぶかで、なんだか可笑しい。
「出かけるなら、紗雪さん一回帰りたいよね?」
「はい…」
シトシトと止む気配のない雨空を、ふたりボーっと眺めた。
そして「出歩くの億劫だね」という結論に達して、先生が借りてきた残りの 映画を見ることにした。
サスペンスとラブロマンスの二本立て。
ソファーで寄り添い合って、まったりとした時間が過ぎた。そして、ラブロマンス映画に触発されて、また体を重ねた。
*
暖かい布団と温かい先生の腕に包まれた状態で目を覚ますと、すでに夕方だった。
「付き合ったばかりなのに、デートもしないで…」申し訳なさそうに先生が言った。
「ふふふ、雨のせいにしましょう。それに、まったり過ごすの好きですよ」と返して、私は明日のことを言い出すタイミングを計る。
「明日からまた一週間始まるね…」という話の流れをつかんで、私は思い切って話し始めた。
「実は明日、バレーボールのサークルに行くことになっているんです……拓士の大学のサークルなんですけど」
どんな反応が返ってくるか全く予想がつかなかったので、恐る恐る先生の顔を見たが、特に表情を変えることなく「…紗雪さんバレーボールするんですね」と返された。
「はい…セッターでした」
「そうなんだ…ずっとやっていたの?」
「高校まで…あの…セッターの子が怪我しちゃったから助っ人ってだけで、明日だけなんです…」
そう言ってから、聞かれてもいないのに言い訳っぽかったかな?と、心配になった。
「あー、そうなんだ?久々ならケガしないようにしないとだね…」
先生は気にする様子もなく、笑ってそう言った。
”平気なふりをするのが得意なんです”
不意に昨晩の先生の言葉が頭をよぎって、胸が騒いだ。
私は先生に体を寄せて「行くのやめます」と言った。
先生は驚いて「え、何で急に?」と私の顔を見る。
「だって、嫌ですよね?」と言う私の言葉に、少し目を見開いたが、すぐに 「大丈夫だよ、それくらい…行っておいで」と、優しく笑った。
本当に気にしていないかな…と、心配になって、先生を見つめる。
「もう、そんな顔しないで。大丈夫。やきもち焼だけど、束縛したいわけじゃないから…」
そう言って、私の額に唇を押し当てた。
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