初恋とバレーボール

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初恋とバレーボール

 「先輩、ブランク感じなかったです。欲しいとこにドンピシャでした」  約束通り、私はバレーボールサークルに来た。集まったのは男子6人、女子8人の計14人とギリギリの人数だった。  軽いランニングとストレッチをしてから、1時間半ぶっ続けで試合をした。  男女の混合のお遊びのサークルだが、ほとんどが経験者で上手かった。  「やっば…もう限界…そして、明日がコワイ…」  なんだかんだ言って、やっぱりバレーボールは楽しい。  キュッキュッと鳴るシューズの音、ダムダムとボールを打ち付ける音、体育館の独特な匂い、どれもが懐かしくて、あの頃の感覚が蘇って私を包んだ。  6年やっていなかったとはいっても、直ぐに感覚は戻ったし、初めてのメンバーの能力を知っていく過程がたまらなくワクワクした。  コート上の脳であり、司令塔のセッターは、体も頭もフル回転。  一本めのレシーブの上げ方によっては、二本目を取りに行くという動きで体 力を消耗するが、ここではそんなことはなく、皆上手に上げてくれた。  だからつい楽しくなって、セーブするのを忘れて全力で楽しんでしまった。  まだ月曜だというのに…  明日からのことを考えると、どっと疲れを感じた。  「この後、数人集まって俺の家で飲むんですけど…」  そう言った拓士に続いて、ボーイッシュなサークルの女の子が「さゆゆん先輩と飲みたいです!」と誘ってくれる。  知っている子はいなくても、拓士のおかげでメンバーとも直ぐに馴染めて、 おまけにやっぱり”さゆゆん先輩”と呼ばれる始末。  「ゴメン、私はもう無理だ…一刻も早く風呂入って寝たい…」私はそう言って、シューズを脱いだ。  「また、サークル来てくださいよ。ケガした子、もともとセッターじゃないんで、先輩セッターしてくれたら新しいことできそう!」  そう言って、拓士が目を輝かせる。  「んー…悪いけど、厳しいかなー…」  体力的に毎週は絶対に無理だけど、隔週くらいなら…とも思わなくもないが、私は先生のことを考えた。  拓士はそれを見透かすように「えー…めっちゃ楽しんでたじゃないですか… ―― あ、先生ですか?嫌がる?俺が説得してみちゃおうかな?」と言った。 私はその言葉に驚いて、大慌てて「ダメダメ、やめて!」と、つい声が大きくなった。  そんな私の反応を見て、拓士はニヤリと笑って「先輩可愛いね」と、私の両肩をポンと叩いた。  「からかうなー!このー!」と、私は拳を振り上げると「ゴメンナサーイ…」と拓士が逃げた。  サークルメンバーたちが、その様子を見て「やっちゃえ、やっちゃえー」とゲラゲラ笑った。
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