筋肉痛とヨッパライ

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 結局、夏帆さんは酔いつぶれてしまった。  二回目のトイレのタイミングで、彼氏さんに連絡するように説得したのだが、頑なに拒否して三回目のトイレの時が来てしまった。そして、いいだけ私や拓士に絡んで、パタリと電源が落ちたように眠った。  拓士は「俺、こんなになる人、今まで出会ってこなかったなぁ…」と苦笑いしてから、ため息をついた。  雅人さんは夏帆さんの実態を知っているので、拓士に任せて一切近寄らなかった。  全身筋肉痛の私には、夏帆さんを連れて帰ることが出来ないので、結局先生のお世話になる。  「二人とも明日休みだよね?じゃあ、俺の家泊まっていきなよ。布団出せばあるし…俺は明日仕事だけど、ゆっくりしていっていいからさ…」  先生はそう言って、迷うことなく夏帆さんを抱えて手配していたタクシーに乗せて、自分も乗り込む。  「紗雪さんも、ほら…」  私のヨボヨボの体も気遣って、手を伸ばしてくれる。  その優しさが私の心をつかんで離さない。  夏帆さん先生に介抱されていいな~…だなんて子供じみた小さな焼きもちを焼いていた自分が恥ずかしくなる。  私は先生の手につかまって、痛みをこらえてどうにか乗り込んだ。  「この状況、生徒に見られたらヤバいな…」と、先生は苦笑いした。  タクシーの後部座席、夏帆さんは先生にもたれかかって、私と先生は手を繋いで密着している。  「確かに…」  私たちはケラケラ笑った。  タクシーの運転手のオジサンも「両手に花ですね…羨ましいなぁ…」と言って、一緒に笑った。  夏帆さんだけが、一人気持ちよさそうにムニャムニャと眠っている。
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