波乱のヨカン

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波乱のヨカン

 『30代 男性 プレゼント』で検索をかけてみた。  ”男性に喜ばれるプレゼント人気ランキング”と出てきたので、クリックしてみる。  名入れボールペン、名入れジョッキ、名入れ酒、名入れポエム、名入れUSB…  名前入れるのが流行りなのか…?  他には財布、香水、ハンカチ、ネクタイ…  どれも上等なものを十分に持っている気がする。  気持ちだから何でもいいのかもしれないけれど、せっかくなら喜んでもらいたいし…  先生の部屋はスッキリしていて、余計な物がない。  自分の手のかけられるものしか置かない主義なのかな…と、勝手に分析する。  それならやっぱり残るものより、消費するものの方がいいのかな…  でも、私のあげたものを持っていてくれるのは嬉しいよねー…  夏帆さんに相談してもろくでもないものしか出て来ないので、あきらめて自分で探しているのだが、結局、ずっとこの調子で決められずに一週間が過ぎた。  夏帆さんは何もなかったように彼氏さんとは仲直りして、最近はご機嫌だ。  結局、いったい何が原因だったのかは不明のままだ。  そして、先生はやっぱり忙しいみたいで、LINEも既読スルーのこともあったり、スタンプの返事ばかり。なかなかリアルタイムでのやりとりが出来ずにいた。  日中はスマホ見れても返事は打てないだろうし、会議やテスト作成したり、もしかしたら保護者からのクレームや生徒の悩みの相談なんかも受けているのかもしれない。  きっと、今までだってそうだったのに、時間作ってくれていたのかも…  土日も地方で研修があるということで、会うことが出来なかった。  たった一週間会ってないだけなのに、”会いたい”思いは募るばかりだ。  私は先生からもらった合鍵をジーっと見つめてため息をついた。  初めて使うタイミングって難しい…  それに、合鍵には嫌な思い出がある。  先生に限ってあんなことは無いに決まっているのだが、使うことを躊躇ってしまう自分がいる。  火曜の夜Tesoroから帰ると、先生から写真がたくさん送られてきた。  こつぶちゃんの写真だ。  『日曜の研修帰りに久々に実家に寄って、こつぶに癒されてきました。休みなしでまた一週間…まだ二日目キツイ…』  相当お疲れのご様子だ。  やっぱり、私が行くと休めないよね…会うのは週末まで我慢だな…  と思っていると、先生から電話がかかってきた。  「はい」  『紗雪さん、起きてた?』  あぁ、先生の声だ…  声が聞けただけで嬉しくて、気持ちが高ぶる。  「はい、もしかして今帰って来ました?」  時計を見ると22時を回ったところだ。  『うん、ちょっと前に…あー…やっと声聞けた…ずっと連絡できなくてゴメンね…』  「お疲れ様です。電話ありがとうございます…」  声が聞けて嬉しいはずなのに、電話越しの声は触れ合えない距離にいることを実感させられて、ますます会いたくなってしまう…  『声聞けて嬉しいけど、会いたくなっちゃうね…』  「あ…」  『どうかした?』  「今、同じこと思ってました」  同じことを同じタイミングで感じてくれることが嬉しい。  『…ね、ワガママ言ってもいい?』と、先生は優しい甘えた声で尋ねた。  「…はい…?」  『会いたい…ウチ来てよ。明日、予定ある?帰りは送……』  会えなかった一週間の寂しさを埋めるほどの、嬉しい一言。  私は自分で思っている以上に、先生に愛されているのかもしれない…  「はい!行きます…私も会いたい…」  嬉しさのあまり、先生の言葉に重なるように返事をしていた。
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