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「結城先生はちゃんとリョウタ君の理解者なんだね…」
「うん、感謝してる。今回は親とまた喧嘩して、友達の家に匿ってもらってたんだけど、バレちゃって飛び出してきてさ……行くところなくなって、前にここ来たことがあったから今日来たってわけ…」
「なるほど…」
だんだんと気温が下がって、ヒュルルと冷たい風が通り抜ける。
私は二つクシャミをして、抱えた足をさすった。
「コレ、かければ?」と、リョウタは私に着ていたパーカーを貸してくれた。
「え、いいよ、リョウタ君が寒いでしょ…」
「俺は…大丈夫」
リョウタは少し頬を赤らめて、鼻の頭を指で掻く。
これは、将来モテるな…
私は、リョウタのパーカーを借りて膝にかけた。
「せっかく話してくれたけど、何の解決にもならなくてごめんね…しかも、寒いのにつき合わせちゃって…」
と、リョウタに向かって手を合わせた。
「サユキって、最初バカな女だなーって思ったけど、意外とちゃんとしてんだな…」
「えー?何それ…一応こう見えても社会人ですけど…」
「大概の大人はさ、やっぱり上からで偉そうに人生の先輩ぶって持論を展開させて押し付けてくるじゃん…」
「うん…」
「サユキはそういうの無しにユウキみたいにちゃんと話聞いてくれるから、なんかありがたかった…」
「アハハ!そうね…他人に偉そうなこと言えるような人間じゃないしね…」
「うん、ユウキ以外にもこんな大人いるんだと思ったら楽になった…」
「そっか…それなら良かったよ…」
リョウタが上着を貸してくれたとはいえ、靴も履かずに寒空の下。
そろそろツラくなってきた頃に先生が戻ってきた。
「えっ!?紗雪さん…え?リョウタ??何してんのこんなところで…って、何で裸足?靴はどうしたの?」
いつも穏やかで冷静な先生が柄にもなく目を丸くしてる姿が面白くて、私とリョウタは顔を見合わせて笑った。そして、事のあらましを説明した。
「リョウタ、心配したんだぞ…留守で悪かったな…」
先生はそう言って、リョウタの両肩に手を置いてポンポンと優しく叩いた。
「サユキと会えたからいいよ…先生、女の見る目あるね…」リョウタはそう言って笑った。
「バヵ…何言って…」と先生は少し動揺した様子で、口に手を当てた。
私は、そんな二人のやり取りを、微笑ましい気持ちで眺めた。
「リョウタ、親に連絡するよ。お母さん心配してたから、安心させてあげないと…とりあえず、部屋入ろう…」
「先生、俺……迷惑かけてすんません…」
「うん、トラブルに巻き込まれたんじゃなくてよかったよ…」
先生は、そう言ってリョウタの頭をガシガシ撫でた。
それから、電話でリョウタの母親に事の経緯を話し、自分がサポートしていくから、家庭でも過度にプレッシャーかけたりしないようにと話をしているようだった。
リョウタは、意外とすんなり迎えに来た母親に連れられて帰って行った。
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