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「あの…先生は私が中学の時、先生に告白したの覚えていますか…?」
「うん…」先生は優しく頷く。
「中学生の頃、まだ子供だったけど恋心は本物で、思い返しても胸が高鳴るほど好きでした。それで、Tesoroで再会したとき先生ちっとも変ってなくて、嬉しくて…でも、咄嗟に『初めまして』なんて挨拶しちゃって、なんとなくそのまま言い出すタイミングがなくなって…そうしているうちに先生のことやっぱり好きになっちゃって、先生が私を一人の大人の女として相手をしてくれることが嬉しくて…」
私はそこまで言うと、先生を見た。
先生は「うん…」と真剣な顔で相槌を打ってくれる。
先生がどんな風に思っているのかは表情からはわからなかったが、怒っているようには見えない。私は自分の両手を握りしめて、そこに視線を落として静かに続けた。
「もう気持ちが抑えられなくなっていた時に、元奥さんのこと聞いちゃって…相手が元生徒だって…そしたら、ますます言えなくなってしまって…元生徒との恋愛なんて嫌悪されたらと思ったら…もう、黙ってようって……知られてしまって嫌われても、それまででもいいって思ってしまったんです…限られた期間でも、先生と恋人でいたいって……でも…ゴメンナサイ……嫌わないで…」
先生の反応がこわい…
でも、ここで泣くのは狡い…
私は、滲んだ涙をこぼさないように唇をかみしめた。
「そっか…」先生はゆっくり穏やかにそう言った。
私は「許してもらえますか?」と恐る恐る先生を見た。
すると先生は真顔のまま俯いてしまった。
――――嘘…
ドキンと心臓が止まりそうになる。
私が何も言えずに泣きだしそうになっていると、先生は「許すも何も・・・こんなに夢中にさせた責任取って?」と困り顔で笑った。
私は張りつめた緊張の糸がプツリと切れて、涙が零れた。
「…先生!」
先生は悪戯に笑って「ってか、その先生やめて…柊真でしょ?」
先生はそう言って私の涙を指で拭った。
「先生はダメですか?」
「うん…やっぱりなんか背徳感が…」
「んー…柊真先生は?」私はそう言って悪戯に笑った。
先生は「コラ…」と私の脇腹を擽った。
「キャッ……」
私もやり返して、私たちはクスクス笑いながら、どちらともなくキスをした。
「いつから知ってたんですか?皐月先生から?」
「いや…雅人さんに年齢聞いた時かな…」
「え!?そんな前から?」
「最初にTesoroで会った時から、前にどっかで会ったことあるようなー…っていうつっかえ感があったんだけど、後藤さんがさゆりちゃんは27歳だよって断言しててさー…それで元生徒じゃないって思ってたから、年齢知ったらね…」
先生はそう言って苦笑いした。
「…なんで雅人さんに聞かなかったんですか?」
「……雅人さんは…紗雪の身内だから…」
先生は突然口に手を当ててモゴモゴと答える。
「え?どういうことですか?」
「…雅人さんに、紗雪に好意持ったことがバレるのが嫌だったんだよ…」
先生はそう言って、眼鏡の隙間に両手を滑り込ませて自分の顔を覆った。
えーーーー!!!?
再会したあの日からすでに好意を持ってくれていたってこと?!
やだ…どうしよう…嬉しい…
私も恥ずかしくなって両手で自分の顔を覆った。
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