真夜中のカミングアウト

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 *  「拓士、この間のことだけど…」  私はTesoroの仕事の後に、店を出た拓士を呼び止めた。  顔を合わせることに気まずさはあったけど、仕事中は割り切って、必要最低限の接触に徹した。  拓士も私と同様、決まりの悪い様子で仕事をしていた。  「…いえ、俺も急に…あんな風に気持ちぶつけちゃって…」拓士はそう言うと、続けて表情を曇らせて「先生とは話せたんですか?」と聞いてきた。  「うん、話した…それと先生、私が松岡だって…元生徒だって気づいてた」  「え?そうなんですか?」  「うん…」  私が告白の返事を切り出そうとすると、拓士は「そっか…じゃあ、もう先輩を脅すことできないのか…」と悪戯に笑った。    「それでね…」と、私が話そうとすると、またそれを遮るように「わかってますよ…先輩の気持ちは変わらないって…」と、拓士は話を聞きたくないとでもいうように顔を背けた。  私は少し躊躇ったが、重たい口を開く。  「うん…私は先生しか考えられない。だから…ごめんなさい」  私は拓士に向かって、頭を下げた。  自分の口からキッパリ言わないといけないと思った。拓士の傷口をえぐることになっても、逃げないでちゃんと自分の口から伝えなきゃいけないと思ったのだ。  「…わかってるって言ってるのに…鬼ですね」  拓士は視線を合わせることなく、苦笑いでそう言った。そして「まぁ、そういう真面目な所も…好きなんですけどねー…じゃあ、またバイトで…」と、私に背を向けた。  「うん…ごめん、ありがとう…好きになってくれて」  私は拓士の背中に向かってそう言った。  一瞬見えた拓士の沈痛な面持ちに、私は胸が苦しくなった。  失恋のツラさや苦しみは、私だって痛いほどよくわかる。もちろん、振られる方がツラいに決まっているけど、"振る"という行為もかなり胸が痛くなるものだ。だからといって、どうすることもできない。ただ、この痛みと向き合って飲み込むしかないのだ。  今、私が泣くのは違うと頭ではちゃんと理解できている。でも、鼻にはツンとした痛みが襲い、目には勝手に涙が滲んできてしまう。  街灯の灯りがぼやけて、一層眩しくなった。  私は涙がこぼれないように天を仰いで、鼻をすすった。      
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