元彼のシュンスケ

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 思い返せば、別れる2ヶ月くらい前から怪しかった。 二人でいてもスマホを気にすることが増えたし、休日出勤や謎の出張が増えて 予定が合わないことも増えていた。 何の気無しに聞いた「今日何してた?」に過剰に反応して、急に怒ったり優しくなったりした。  それでも、普通にデートしたりお泊まりしたり、もちろんすることもしていたし、その時には「可愛い」だとか「好きだよ」だとか、そんな言葉も多くはなくとも言ってくれていた。  そして、その日は訪れた。  俊介から部屋の合鍵をもらっていたので、日頃からたまに掃除したり、ご飯を作りに行ったりしていた。  その日もそのつもりで行ったのだが、それがたまたま院長の子供の親子遠足でクリニックが休診になった月曜だった。  玄関に乱雑に脱ぎ捨てられた品のないパンプス。それを見た時に私は全てを理解した。  しかし私の訪問は、俊介にとって予想外のことで、まさか彼女が来るとも思 わずに巨乳の女と裸で絡み合ってお楽しみのようだった。  私はみぞおちの辺りが圧迫されたように苦しくなり、朝食が喉元まで迫り上がってくるのを感じて、慌てて口に手をやった。  二人は私が入ってきたことにも気づきもせずに行為を続けた。そして巨乳女がやっと私を認識した時には、私は手に持っていた買い物袋の玉ねぎや大根を二人に向かって投げつけていた。そして「このクズ!」と一言罵声を浴びせて 部屋を飛び出した。  その後、俊介から「魔がさしただけ、やり直したい」という言い訳の電話が何度もかかって来たが、私は取り合わなかった。結局、完全に別れられたのは、浮気現場を目撃してから約一ヶ月過ぎた頃だった。  初めは悲しみよりも怒りが先行していた。  でも、だんだんと悲しくて、悔しくて、やるせない思いが押し寄せてきて、しばらく苦しんだ。  公私混同しないように職場では平然を装ったのだが、いとも簡単に夏帆さんの洞察眼によって見抜かれてしまったのだった。  それで、話を聞いてくれた夏帆さんが一緒に怒ったり慰めたりしてくれたから、今こうして平和が戻ってきたというのに…  何故また私の前に現れる…  私の24年の人生の中で一番会いたくない人間が俊介だというのに。
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