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三日目
無事、今日を迎える事が出来た。
ありがとよ新入り達。
イセエビを注文されなかったのは、お前達のおかげかも知れんな。
無理もない。新人達の顔が
『注文するなよ!絶~対するなよ!!』って顔だったもんな。
仕事増えるのが嫌だったんだろうがな。
あんな顔されりゃ、客だって注文したら申し訳ないって思うわな。
まあ良い。
とりあえず、明るい時は安全だと分かってるんで
何か問題があった時以外は省略させてもらうぜ。
と、暗くなる前に、ようやく待ちわびた時が来たぜ。
イセエビがついに追加されたんだ。
よっしゃ!!
これで勝つる!!!!
奴がいなくなるまでは確実に俺は生きられる!!
・・って思ったんだけどよ。
天寿を全うする事が本当に幸せな事なのかどうか
ちょっと分からなくなってきたぜ。
何でこんな事を思ったかって?
新入りの体を見て漠然と・・だけどな。
新入りは体が赤くて新鮮な感じなんだが、
俺は色々な所が黒ずんで来ているんだ。
つまり、もう新鮮じゃねえ訳よ。
このままさらに黒くなり続けるのが良いのか
はたまた高級食材として、なるべく新鮮な内に
おいしく食べられるのが良いのか
これが分からない
ってな訳よ。
「ちょっと尋ねたいんだが・・」
俺がそんな事考えてる時に
新入りが話しかけてきた。
「ここは何なんだ?どうやら水族館では無さそうだが・・。それに、俺達はペットとして買われてる訳でも無いのだろう?」
ちょっと生意気な野郎だなと思ったが
まあ良い。
本当の事を話してやるとするか。
「ああ。ここは『レストラン』ってとこで、この水槽は『生け簀』だ」
「そうか・・。じゃあ俺達はいずれ食われる運命なのか」
「そう言う事だ」
お前が先だけどな。
「そうか。ありがとう」
と言って、新人はそっぽを向いた。
それ以降は俺に話しかける事も無かった。
仕方ねえよな。
食われると分かってるのに、わざわざ仲良くする事もない。
賢明な判断だ。俺でもそうする。
ちなみに、今日は『サザエのつぼ焼き』が注文された。
新入りは、サザエが白衣の男に連れていかれた時も
サザエが調理されて出て来た時も黙って見ていた。
どんな事を考えていたんだろうな。
きっと、いずれは自分も・・って考えていたんだろう。
同情するぜ。
そうは言う物の、
結局俺の中でさっきの答えは出なかった。
寿命で死ぬのが良いのか、食われて死ぬのが良いのか
それが問題だ。
いずれ答えが出れば良いんだが・・。
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