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あれから10年。
地球規模で災厄が降りかかっている事を、世界保健局はついに認めた。
世界へ向けて発信するのか、パニックを避けるためもうしばらく秘匿しておくのか、各国の首脳たちが話し合いを始めた。
誰にも変えられない結論があった。
「人類は滅亡する」
たまごが割れた2025年以降。
人種や年代、住んでいる地域に関わらず、人類は徐々に生殖能力を失っていった。
原因はウィルスだった。
人類はみずからを滅ぼすウィルスの宿主を後生大事に守り運び、伝播させたあげく、たまごを孵してみずからトリガーを引いたのだ。
たまごを産んだのは黒い鳥。
汚染された黒い水を泳ぐ、黒い魚を食べて育った黒い鳥。
または鳥に擬態したなにか。
破壊し消費し無限に増殖を続けた一つの種の終わり。
もう預言者でなくとも、滅亡の黙示録を書くことは出来る。
100年の後、この世界は滅び、楽園は動物たちに還される。
「またあの鳥だ」
ある時マナミは空を見上げ、カラスに似た黒い鳥がずいぶん増えていることに気が付いた。
「お父さんに名前、訊くの忘れたな~」
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