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 世界中の人々のささやかな善意。  動物や植物に向けられる愛、地球を守り救う目的でなされるさまざまな行為。  それと交換のように顕現するたまご達。  飢餓や温暖化、終わらない人種の対立、最終兵器を競ってもちたがる国家たち。  そんな鬱屈した世界に変化が訪れるのかもしれない。    予言は実現し、2025年の4月に世界中のすべてのたまごは割れた。  なにが孵るのか、固唾をのんで見守っていた人類は落胆した。  経年劣化した樹脂が脆くなるように、たまごの表面はくもって無数のヒビが入り、あっというまに砂塵となって空へ舞い上がった。   「なあんだ」  世界の終わりに対する歪んだカタルシスを期待していた人類は、砕けたたまごをさっさと捨てて前に進んだ。  かに見えた。
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