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「ほんとにもったいない」 「仕入れを見直すか」 「在庫が少ないと他の店にお客さんを取られないかしら」 「バレンタインキャンペーンの時期だがな」 「去年もだいぶ、売れ残ったのよねぇ」  珍しく揃って晩ごはんを食べられることになった土曜日。  両親は廃棄する日配品について苦悩していた。  おにぎりや弁当など日持ちのしない商品をどう売り抜けるか、季節、気温、天気にイベント。  さまざまな要因を考慮して仕入れの数を予測するのだが、外れた日には大量の廃棄食品が出る。  晩ごはんを食べているマナミの頭越しに、埒の開かないやり取りは続く。 「半額シールやポイント還元もあまり効果ないしな」 「そうねえ」    マナミはそっとチャンネルを替えた。  観たいアニメが始まる時間なのだ。  都心に建つ豪華なタワーマンションのオープンハウスや廉価な外食チェーンの食べ放題のCMが流れたあと、画面は臨時ニュースに切り替わった。 「たまごに数字がうかんでいる」というのだ。    たまごを所持しているたくさんの人々が一斉に、「2025/04/04」と数字が浮かび上がったたまごの画像を投稿しはじめた。  じつは「善意のたまご」は日本が始まり、というわけではなかった。  ほぼ同時多発的に世界中で配られ始めていた。   あいかわらず、誰がいつどうやって届けにくるのかは不明のままだが。   「日付と仮定したら、来年の春ということになります」 「人々の善意が発端のこのたまごから、なにが産まれてくるのでしょう」  キャスターはどちらかといえば、楽しみにしているニュアンスでこの話題を締めくくった。
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