第二章

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ファハドと侍従達は 『山脈の国』に辿り着く前に『海の国』『岸の国』『熱砂の国』『平原の国』 〜物見遊山の観光では無いので「目的」 数多のザッと十種類以上、山の如くの種類のスパイスを各国、大急ぎで買い求めました。 どうしてか?といいますと 生産地、鮮度、何もかもがバラバラだからでした。 当然かぶる物もありましたが、山脈の国で隠居したばあや様が如何なる品を好むかまるで解らない為、資金を出し惜しむ訳にはまいりません。 中には重量と同じ黄金を所望する、法外な値段を商人が求める香辛料もございました。 彼はそれでも交渉の後、最高の物を自分達の足で探し揃えました。 全ては愛あればこそです。 本音では今すぐ国に帰り、恋する姫君の床に駆けつけたい気持ちでしたが必死に堪えました。 断腸の思い〜 切なさと苦しさとやるせなさと涙をこらえ冷静に各国を訪れます。 『岸の国』では馬車をチャーター、恐れ知らずの御者の元〜 荒れる街道を猛スピードで駆け抜けました。 『熱砂の国』では砂漠と 〜表土が硬いが砂埃がモウモウと酷い土漠を。 ラクダ〜 主従は共に、乗り手がへぼで気に入らねばペッ! 容赦なくクッサイ唾を引っかける、気位が高く気性の荒い動物を悠々自在に乗りこなし進みました。 この普段ノンビリとした生き物はイザ気分が乗り走り始めると〜 それはもぅ馬並みに バチバチの砂塵を長い睫毛で物ともせず、長い頑丈な四肢を蹴立て猛スピードで突き進みます。 「お客さん達凄いねぇ」 「タマゲタ、本当に初めてかい?」 二人は試乗をさせてくれた辣腕のラクダ商人に、驚きで目を丸くされた程の優れた乗り手でした。 『平原の国』の、鋼鉄の如しの強き足腰を誇る天馬を相手の騎馬など容易いことでございます。 海の如しの大草原を風の如くに疾走、丸いテント式の住居を構える遊牧民の、点在する集落を換え馬をしながら縦断〜 とうとうお妃様の生国、屏風のような山山の麓 未だかつて見たことも無い山稜がそびえる目的地に到着致しました。 「漸くついたな」 「ええ、お坊ちゃま」 既に籠の中の頼れる鳩達は、残り一羽 〜最も体が大きく持久力が素晴らしい、両翼を支える筋肉が頑丈なダイヤモンド号のみ 王宮鳩舎選抜メンバー内でも、とっておきの翼です。 この鳩には重大な任務が期待されています。 「急ごう」 直ぐさま、お妃様の兄者が治める王宮に足早に向かいました。
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