第三章

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ファハド達は土地勘のあるベテランガイドの案内の元、道なき道を進み高山森林限界値を越えてゆきます。 稜線に連なる峠を幾つも過ぎ、とうとうガレ場の山肌にへばり付くように造られた村に到着です。 既に日は傾き、厳しいルートに幾ら体力自慢のファハドといえど疲労困憊でした。 「では村長に到来の挨拶をしに行って参ります 新しい、ここでの案内役を自分はお願いしようと考えております故 それまで我が実家であるこちらで逗留、尊きお体をお休め下さい 既に大気が酷く薄いので、ここよりも高き場所に上がるには安全と健康の為に〜 必ずお体を一晩ならさなくてはなりませぬ」 「すまぬ、いらぬ手数をかける」 「!!勿体のうお言葉にございます」 恐縮しきりのガイドの青年が静々礼の姿勢を取り 質素であるものの心地よい〜 滞在者が居心地の良きよう整えられた住居から退出すると、ファハドは一人でブラリ気楽に庭先に出ようと試みます。 「!!危のうございます坊ちゃま!」 「では皆で新鮮な空気を吸おうではないか?」 二人と一羽は未だ旅の装束を解いてはおらず、ですから全員で気軽に外に出ました。 ************* 「これは凄いなぁ……」 「ええ本当に」 見下ろす眼下 巨大な氷河が削り取って出来たという天然の路……! 自分達が今まで登ってきた険しき山岳ルートがえも言えぬ絶景として、どこまでも彼方まで広がっています。 薄い冷え冷えとした大気の中、言葉も無く無言で見つめて居ると、ヒュウと一陣のつむじ風が頬を撫でます。 思わずファハドが振り返ると 身分卑しからずな、品良く整えられし上等の毛皮の装束をまとう背の高い人物が忽然と立っておりました。
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